頭頂眼+松果体+第三の眼
Parietal eye+Pineal gland+Third eye
ネパール最古の仏教寺院「スワヤンブナート」。ストゥーパ(仏塔)に描かれたブッダアイ(仏陀の智慧の眼)が世界的に有名。
首都カトマンドゥを代表する観光スポットで、ユネスコ世界遺産にも登録されている。上下二点の写真は、Wikipediaに掲載されている松岡明芳氏の素晴らしい撮影(CC)。
私は1993年に訪ねました。参拝客や観光客が多かったけれど、不思議な静寂があり、ヒマラヤ山脈を望む雄大な景色を楽しみました。そのときメモ帳代わりに持ち歩いていた安価なコンパクトカメラで撮ったのが下。丘の中央にストゥーパが建っている。
小高い丘にそびえるストゥーパを遠くから眺めてみようと思い、ガイドブックも地図も持たずに、足の向くまま何キロも歩き回りまわりました。
たぶんこれが日干しレンガの家というものなんでしょう。それと小規模な畑。その向こうにスワヤンブナートの丘が見えます。
スワヤンブナートの素晴らしい写真はネット上にいろいろアップされていますが、こんなところを歩いてみる観光客はないのでしょう。私が撮ったような景色は、ほぼ見つからなかった。
今回の文章もそのやり方で進めたいと思います。寄り道したり、道草を食ったり、遠回りするということです。研究論文や企画書ではないので。
話題の中心は「頭頂眼・松果体・ブッダアイ=第三の眼」になる予定です。第三の眼は古代から続くインドの瞑想の伝統では第六チャクラ(アジュナ)と呼ばれます。
チャクラはスピリチャルなエナジーのセンター(中枢)です。インドで生まれた仏教もその流れをくむので、仏像や仏画に第三の眼が表現されます。奈良や鎌倉の大仏のように。
その第三の眼のルーツが、昆虫や両生類、爬虫類などに見られる頭頂眼(単眼)のようなものであることをご存知でしょうか?
01 昆虫たちの頭頂眼(単眼)
Parietal eye of insects
昆虫の二つの複眼は像(イメージ)を映し出す進化した眼です。
頭頂眼(単眼)は光を感じる原初的な眼・・・・・ですが、光を感じる眼ということが、松果体や第三の眼の話題につながっていきます。
まずは庭で撮った昆虫の写真です。
昆虫が大きな複眼を持っていることは誰でも知っていると思いますが、複眼のあいだに小さな単眼があることを知っているひとは少ないようです。私もそうでした・・・・
昆虫は動いたり飛んだりするうえに、単眼は小さいので肉眼では見にくい。写真を撮って拡大しないと、カタチがわからないと思います。
2020/11/25 玄関先にいたオオカマキリ。まもなく産卵して、戦士としての一生を終える時期です。
上のオオカマキリの頭部拡大。二つの大きな複眼の間に、小さな頭頂眼(単眼)が三つあります。“S”は、Simple eye(単眼)の略です。
2020/05/21 カモミールの花で蜜や花粉をなめるナミハナアブ。
上のナミハナアブの拡大。大きな複眼のあいだが丸く盛り上がって、その上に頭頂眼があります。
2019/07/16 巣のケアをするコアシナガバチの頭頂眼。
2022/07/24 スイレンの葉で水を飲むキアシナガバチ。
キアシナガバチの頭頂眼。
2020/9/22 熟しすぎて落果した次郎柿を食べるオオスズメバチ。その横で口吻(こうふん=ストロー状に伸びた口)を伸ばして柿をなめているのはニクバエの仲間。
オオスズメバチの頭頂眼。
2021/4/27 ハナショウブの花で吸蜜が終わったヒゲナガハナバチ。
ヒゲナガハナバチの三つの頭頂眼。
2021/7/15 薬草のオトギリソウの小さな花で吸蜜する蟻サイズのアカガネコハナバチ。
アカガネコハナバチの頭頂眼。
2016/07/23 羽化して飛び立つまえ、じっとしているアブラゼミ。
アブラゼミの三つの頭頂眼。
2016/08/17 岩につかまって休息するトノサマバッタ。
トノサマバッタの頭頂眼。
2014/07/15 野菜用の支柱として使っている竹にシオカラトンボがとまる。
シオカラトンボの頭頂眼。
02 第三の眼のしるし
Sign of the third eye
「第三の眼」とか「第六チャクラ」というと、うさん臭い怪しい話だと思うかたがあります。けれども日本の仏像や仏画には、あたりまえに第三の眼が表現されている。
仏教が生まれたインドでは、ヒンドゥ教の多くの神々に第三の眼が描かれ、一般の民衆もふつうに第三の眼のしるしを眉間につけています。
1992年から1993年にかけて、インド、ネパール、タイを旅したそのとき撮った写真の話から始めます。
3000年もの歴史を持つガンジス河の聖地ベナレス。川岸にはたくさんの神殿や沐浴場やガート(死体焼き場)が並んでいますが、旧市街は迷路のようになっていて、ヒト、牛、ヤギ、ロバたちが一緒に暮らしていました。
仏陀が訪ねた古都でもあり、古きよきインドの面影を残しているという。どの路地にも何か秘められた物語がありそうな、不思議な奥深さがあった。初めて訪ねたのに、なぜか懐かしい気持ちにもなりました・・・・・
その路地を進んでいくと、思いがけず若いご婦人が微笑んで、写真を撮ってもいいという合図を送ってくれた。私は喜び勇んで、ピンボケしないようにと祈るような気持で撮った。
安価なコンパクトカメラだから 、肝心なときにちゃんと撮れてないことがあった。
観光気分の旅ではなく、これからの人生を決める、生き方を根底から考え直す旅だったので、あまり写真に気を取られたくなかった。
そうは思ったけれど結局その旅で2000枚近くの写真を撮りました(今ならスマホを持ち歩いて、写真でも動画でも気軽にすぐSMSにアップできますが)。
彼女の写真、一枚は気合が入りすぎシャッターを強く押したため、ぶれていました。もう一枚はフラッシュがちゃんと作動していなくて暗かった。何とか一枚だけが撮れていたので、貴重な一期一会の瞬間を残すことができました。
「聖地ベナレスの女」。額に第三の眼のしるし。
お元気にしておられるでしょうか?
彼女のこと、言葉や文字だけだったら伝わらないと思います。安価なコンパクトカメラであっても持ち歩いてよかったと思います。
ベナレスのモンキーテンプルでバンスリ(横笛)の演奏をするハリプラサード・チョーラシア。1938年生まれだから、この時55歳だった。現在は84歳。
今日の夜、モンキーテンプルでハリプラサードの演奏があるよ、と地元のひとから聞いた。早めに行って最前列のいい席を取った。といっても、地面に敷いたゴザの上に座るだけですが。
演奏会は夕方5時から始まり、前座の歌手や器楽演奏者などが次から次へと入れかわるだけで、いつまでたってもプラサードは出てこない。あまりにもたくさんの音楽を聞きすぎて疲れ果て、ぐったりした。宿に帰って眠りたいと思った。
ハリプラサードは深夜に現れた。バンスリの巨匠、バンスリの人間国宝、クリシュナ神の生まれ変わりなどと称賛される。思いがけず、聖地ベナレスでこんなに近いところで彼の演奏を聞けるなんて・・・・・ドキドキした。
そして曲はゆったりと静かに瞑想的に始まった・・・・・
曲目はインド古典音楽で、一曲が長い。たぶん1時間ぐらい。それが何曲も続く。時間の概念が違うと思った。たくさんのインドの人々(見たところ外国人は私と友人のふたりだった)が、いつ終わるともわからない深夜のハリプラサードを聞いていました。
だんだん時間の感覚が無くなってきた。今はいつなのか、ここはどこなのか、自分はこんなところでいったい何をしているのか、私はいったい何者なのか・・・・・
ゆっくりと東の空が白んできて、やがて曙光がさした。日の出とともに延々と続いた演奏が終わり、ハリプラサードは立ち上がって昇ってきた太陽に礼拝しました。
次の瞬間、彼はよろめき、弟子たちに抱えられた。こうして聖地での徹夜のコンサートは終わった。
ハリプラサードの眉間に第三の眼のしるし。下は2015年に開催されたフランスでのコンサート。これを見ると、1993年ベナレスの徹夜コンサートがありありとよみがえってきます。まさにこれです。
インド・マハラシュトラ州プネー市のラクシュミーストリートで撮影。インドにはこういう祠(ほこら)のようなものが無数にあった。これはドゥルガ神。超人間的な眼をしている。眉間に第三の眼のしるし。仏教の千手観音のルーツだといわれる。
インドの女神ラクシュミー。眉間には第三の眼が描かれています。インド滞在中、私もこういうカラフルな神様ポスターを買いました。 ラクシュミー女神は、仏教と融合して「吉祥天」になりました。
インド・マハラシュトラ州プネー市の青空市場で白いトウロコシを売る女性。ジーパンや作業服ではなく、こうした伝統衣装をまとっておられた(今はどうかわからない)。うしろの女性も、華やかなピンク色の伝統衣装。
インドで最も愛され尊敬された歌手、ラタ・マンゲシュカール。生涯3万曲もの歌曲を歌ったという。今年92歳で天寿をまっとうされました(2022年2月6日)。これは若いときのお姿。眉間に頭頂眼・・・いや第三の眼のしるし。
インドに滞在したとき、彼女のカセットテープをいくつか買いました(まだカセットテープが主流だった)。帰国後もテープが伸びるほど何度も聞きました。それを聞くと、あの旅の記憶がよみがえってくるからです。
これも買いました。伸びてしまい、とっくに処分しましたが。
これを20ドルで販売しているサイトを見つけました(写真はそのページのもの)。今時カセットテープを買うひとがあるのでしょうか?
YouTubeでこのアルバム「Sajda」全曲を聞けます。↑上のカセットの写真をクリックすると、そのなかの一曲「Aankh Se Door Na Ho」を聞くことができます(YouTubeに飛びます)。
こちらはタイ、ピッサヌローク県のワット・プラ・シー・ラッタナー・マハタートの金色仏。額に第三の眼のしるし。「ワット」はタイ語で寺院を意味します。
この寺院にはたくさんの金色仏が並んでいます。わかりにくいけれど、額に第三の眼のしるしがあります。頭頂には「ラッサミー」と呼ばれる火炎光があるのがタイの古仏の特徴。オーラや第七チャクラの象徴表現です。
タイ、スコータイ県のワット・サパン・ヒーン。旧都スコータイの諸行無常を見下ろして立ち続ける施無畏印の大仏(12m)と、瞑想する降魔印の座像(下に座る仏)。
座像の額に大きな第三の眼のしるし。
ワット(寺院)というけれど、柱しか残されておらず、雨ざらしになっている。 ラームカムヘーン王(在位1279~1299)の碑文にはこうあります。
「王は満月の夜この寺院に住む大僧正に敬意を表しに来て、そこには一体の仏立像があった」。 ラームカムヘーン王が訪ねたときすでにあったということです。
タイ、サムイ島で見たルーシー。サンスクリット語の「リシ」からきている。賢者、聖者を意味し、漢訳仏典では「仙」とも訳される。 タイではいろんなルーシー像に出会いました。
日本の「役行者(えんのぎょうじゃ)」みたいな存在かな。タイも仏教伝来以前に日本の神道みたいなものがあって、それが融合しています。
タイ、チャンマイのワット・プラタート・ドイ・ステープで見た女神(?)の眉間にも第三の眼のしるし。
[続く] to be continued later