ポリネーター・フレンドリー・ガーデニング
第1章
「花はすてきなレストラン」
↑2012/09/14 キクイモの花で吸蜜するナミアゲハ。
花がレストランだということ、ご存知ですか?
素敵な色と香り、甘い花蜜、栄養たっぷりの花粉。
蝶やミツバチ、ハナアブ、バッタ、甲虫たちにとって、花は極上のレストランです。

↑2012/09/14 トップの写真と同じ子。
花はなぜ咲く? 画家になることを夢見ていた少年時代の私は、花は世界を美しく装飾するために存在するのだと思っていました。花が無ければ、空や海の青、植物の葉の緑ばかりになってしまう。花が世界に多様な色彩をもたらしている・・・
それは大きな間違いでした。花は詩人や歌人、画家や園芸家、観光客を喜ばせるために咲いているのではなかったんです。花は昆虫たちに花粉を運んでもらうために、色やカタチ、香り、蜜を工夫していた・・・

↑2012/09/14 同じ子です。羽がまったくいたんでいない、羽化したばかりだったのでしょう。
花はこういう子たちを誘っています。大地に根をはる生き方を選んだ植物たちは、自分が移動できないから、
羽を持って遠くに飛ぶことができる子たちに花粉を運んでもらいたい。

2015/07/26 オニユリの花に吸蜜にやって来たモンキアゲハ。

オニユリの花は、大型の蝶を誘っているようです。花粉が羽に付着するようにオシベの位置を工夫しています。 少年時代も画学生時代も花の絵をたくさん描いたけれど、そういうふうには花を見ていませんでした。

2014/07/27 オニユリの花で吸蜜するクロアゲハ。羽や胴体に赤い花粉が付着しています。
花は花粉を運んでもらいたい・・・誰でも知っているあたりまえのことなんでしょうが、その様子をまじまじと見ることになったのは、2002年に、ここ九州大分県の内陸部、自然豊かな豊後竹田に移住して、
庭で様々な草花、野菜、山菜、ハーブ、果樹、薔薇を育ててみたからです。

2020/11/19 このときミツバチを可愛く撮れました。ローズマリーの花で吸蜜するニホンミツバチ。体毛に花粉がいっぱい付着しています。「花粉の運び屋さん」らしい姿です。
見慣れないものを警戒する傾向は誰しもあると思います。人に対してもそういうことはあって、おつきあいして見ると誤った先入観を持っていたことに気づくことがあります。ミツバチたちも見慣れると可愛い子たちです。ハチ→刺す→恐いは誤解です。

2021/05/19 マロウの花にやって来たニホンミツバチ。花粉をいっぱいくっつけています。花粉は黄色系が多いようですが、マロウの花粉はうすいピンク色。

2020/03/23 菜の花で吸蜜するニホンミツバチ。顔が花粉まみれ。
私は2002年からこの庭で無数のミツバチ、マルハナバチ、ハナアブたちと出会ってきましたが、刺されたことは一度もありません。 ただしアシナガバチに刺されることはあります。
私はたびたび刺されましたが、アシナガバチのことを悪く思う気持ちは全くありません。草刈りするときまちがって巣に触れてしまうと、アシナガバチは攻撃されたと思って正当防衛します。
アシナガバチにとってみたらゴジラみたいな巨大な怪獣(私のこと)に攻撃されたと思って、子供たちを守るために刺しただけです。注意力がなかった私に非があります。2002年以来、妻はアシナガバチにも刺されたことがありません。妻の方が注意深いからです。

2020/06/07 薔薇の枝に巣を作るコアシナガバチ。
ミツバチとアシナガバチ、確かに似ているといえば似ています。同じ「ハチ目」ですから。目(め)のことではありません。目(め)も似ていますが、ここでいうのはリンネ式の生物分類学上の概念である目(もく)のことです。
界―門―綱―目―科―属―種という階級(階層)があって、ニホンミツバチの場合だと、動物界―節足動物門―昆虫綱―ハチ目―ミツバチ科―種:トウヨウミツバチ、トウヨウミツバチという種(しゅ)の亜種がニホンミツバチとして分類されます。ミツバチはこの目(もく)までが同じ階級です。
私たちはしょっちゅう見ているから、全く違うことがわかるけれど、見慣れていない人にとってみたら同じように見えるかも知れません。
「恐い」という先入観があると、よく観察しない傾向は誰しもあることです。恐怖があるとススキが幽霊に見えてしまう。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」です。
あとの章で話題にしますが、アシナガバチたちもけっして危険な子たちではなく愛すべき「地球家族」です。この子たちと共存できます。どうか彼らに殺虫剤を使わないでください。彼らが薔薇につく害虫を退治してくれるので助かっています。

2019/05/21 クローバーの花の花弁につかまって吸蜜するセイヨウミツバチ。クローバーは、ミツバチたちがつかまりやすいように花弁の形態を工夫している?
後ろ足に花粉を集めて巣に持ち帰ります。飛びながら毛に付着した花粉をここに集めるようです。これを子育てに使います。食糧の無い冬場の貴重な栄養にもなります。
日本に生息するミツバチは日本在来種のニホンミツバチと外来種のセイヨウミツバチの2種類だけです。ミツバチの種類は世界でも9種類しかなく、進化した高度な社会性を持っています。「昆虫界のスーパースター」だと称賛する人もあります。
日本語版Wikipediaは「ミツバチとマルハナバチは知的な生き物である」と書いています。ミツバチの知性についてはあとの章で話題にします。

2016/04/13 クローバーの花で吸蜜するセイヨウミツバチ。私たちが住んでいるエリアにはセイヨウミツバチの養蜂家がいないのでしょう。この庭はあまり飛来しません。
たまに見かけますが、少人数またはひとりでやって来ます。この子もひとりでした。どこでどんなふうに暮らしているのかさっぱりわかりません。

2019/05/03 レンゲの花で吸蜜するセイヨウミツバチ。
私は子供のころレンゲの蜜を吸いました。ほのかな甘さがありました。今はそんな経験をする子供は少ないでしょうね。私は国鉄京都駅まで大人の足で30数分のエリアで生まれたんですが、小学校1年生の途中で大阪府茨木市に移転しました。
当時の茨木市は私たちの家のまわりにも田畑がたくさんあって、小川にはメダカがいっぱい泳いでいました。きれいなタナゴもいたし、赤いドジョウも見つけました。菜の花にはいっぱいモンシロチョウが舞っていました。
見たことのない光景に感動し、ここは楽園のようなところだと思いました。

2019/04/15 レンゲの花にやって来たニホンミツバチ。
小学校の3年生か4年生のとき、5人ほどの女の子が5人ほどの男の子を誘って少し遠くのレンゲ畑に行きました。それは驚くほど広いレンゲ畑、ピンク色の巨大な絨毯でした。
女の子たちがレンゲの花かんむりやブレスレットを編んで、頭にかぶせ手首にまいてくれた。そのときのこと今でもありありと思い出すことができます。人生最高の瞬間だったと思います。

↑2020/06/02 ムシトリナデシコの花にじょうずにつかまって吸蜜するトラマルハナバチ。ミツバチより少し大きなハナバチ。
日本語版Wikipediaが言う「ミツバチとマルハナバチは知的な生き物である」というそのマルハナバチの仲間で、ミツバチ同様に社会性を持っています。
が、どういうわけか日本ではマルハナバチの認知度が非常に低い。

2021/06/23 カンナの花にやって来たトラマルハナバチ。後ろ足に花粉のかたまり(花粉団子)を付けています。自分ひとりが花粉を食べて「あー美味しかった」というのではなく、養うべき家族がいるので、こうして巣に運ぶ。
マルハナバチのこと西洋では親しまれているようです。 ロシアの作曲家リムスキー・コルサコフ作曲『熊蜂の飛行』(1900)は、ロシア語で“Полёт
шмеля”、英語で“Flight of the Bumblebee”。
実は“Bumblebee”(バンブルビー)は、マルハナバチのことです。正しくは『マルハナバチの飛行』なんですが、日本では誤訳され『熊蜂の飛行』となったままになっている。
↑【YouTube】Flight of the Bumblebee Animated in Color
日本でマルハナバチの認知度が低く、かといってクマバチの認知度も低い。まあどちらでもいいや、ということなのでしょうか?

2019/05/13 マロウの花に吸蜜にやってきたクロマルハナバチ。近年、日本各地で絶滅を危惧されています。
神奈川県・・・絶滅
福岡県・・・絶滅危惧1類
千葉県、京都府、宮崎県・・・絶滅危惧2類
山形県、長野県、三重県、滋賀県・・・準絶滅危惧
以前はこの庭にたくさん来てくれたんですが、最近は極端に少なくなっています。彼らのことが心配です。

↑2019/05/26 ベロニカ・フェアリーテイルで吸蜜するコマルハナバチ。後ろ足に小さな花粉団子を付けています。かわいい小さな丸花蜂です。この子たちも以前はたくさん来ていたんですが、近年明らかに減少しています。
ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ、クロマルハナバチ、トラマルハナバチ、コマルハナバチたちは、共同生活して集団行動する社会性のあるハナバチ・・・花のレストランに「団体客」としてやってくるお客さんです。

↑2018/06/27 ラベンダーの花に吸蜜にやって来たクマバチ。ブーンという羽音の大きい存在感のある大型のハナバチです。多くの人はこの子を怖れますが性格はいたって温厚。
クマバチは団体さんとしてやって来る場合と、単独でやって来る場合があります。ミツバチやマルハナバチのような高度な社会性は持っていないものの、母子が巣のなかで同居するような社会性があり、「亜社会性」と呼ぶそうです。
一方、ほとんど知られていませんが、「お一人様」でやって来る個性的なお客さんたちがたくさんあります。 英語で「ソリタリー・ビー Solitary
bee」、和訳して「単独性ハナバチ」と呼ばれる子たちです↓



↑2021/05/25 シュンギクの花で吸蜜する蟻サイズの単独性ハナバチ。名前は不明。似たような子がたくさんいて専門家でなくては確定できません。羽が無ければほぼ蟻に見えます。
かなり小さい、肉眼だとよくわかりません。特に私のように近眼の老眼だと。デジタルカメラで撮って、パソコンで拡大して、「ああ、こういう姿だったのか」と感嘆します。
シュンギクの花をご存知ですか? シュンギクの葉をスーパーマーケットで買って鍋物に入れることはあっても、シュンギクの花を目にする機会はほとんどないと思います。
私は毎年庭で少しシュンギクを栽培するので、毎年シュンギクの菊らしい花を鑑賞することができます。 で、そこに蟻サイズのハナバチがやって来るんです「お一人様」で。私たちがシュンギクの葉をいただいたあとは、花がこの子たちのレストランになります。

2021/05/23 イタリアンパセリの花にやってきた蟻サイズのハナバチ。パセリを栽培した人でないと、パセリの花と言われてもわからないと思います。ごくごく小さな花の集合です。花弁も非常に小さい。蟻サイズのアタマと比べてください。小さいけど立派な5弁花です。

↑2021/04/19 カモミールの花で吸蜜するアカガネコハナバチ。 カモミールの花は小さい。そこにこんな小さなハチが吸蜜していることに気づく人は少ないと思います。 こういう小さな子たちもけんめいに生きている、その姿に感銘を受けます。

↑2021/04/19 上と同じ子です。カモミールの花で吸蜜するアカガネコハナバチ。
アカガネは銅のこと。メタリックなボディ、緑がかった二つの複眼、複眼の間にある三つの頭頂頭(単眼)、四枚の羽、六本の足、二本の触角・・・小さいけれど完璧、素晴らしい創造です。

2021/03/23 ムラサキハナナで吸蜜するニッポンヒゲナガハナバチ。ミツバチより少し小型のハナバチです。ヒゲが長いのではなく触角が長い。それが特徴だから、この触角を見たら誰だということがすぐわかります。

2021/03/23 上の続き。花芯にアタマを突っ込んで吸蜜し、それを終えたら花粉がアタマにつく構造になっています。蜜を提供して花粉を運んでもらう。

↑2021/04/05 ブロッコリーの花で吸蜜するニッポンヒゲナガハナバチの女の子。 後ろ足に花粉を付けています。子供たちのために巣に持ちかえる。
ミツバチたちは集団で飛来して、てきぱき能率的に吸蜜します。さぼっているミツバチや休憩しているミツバチを見たことがありません。
ヒゲナガハナバチのような単独性ハナバチたちは、気ままというかマイペースというか・・・そこがこの子たちの面白いところです。

↑2021/07/12 マウンテンミントの花で吸蜜するヒメハラナガツチバチ♂。
「ハラナガ」という名前の通り、おなかが長い。それがじゃまになって、ミツバチのようには速く飛べません。飛ぶのも遅いし、食事をするのも遅い。もたもたしています。そのために写真は撮りやすい。ミツバチのように素早いハチは撮るのが難しい。

2021/05/22 ベロニカ・フェアリーテイルで吸蜜するヒメハラナガツチバチ♀。
単独性ハナバチの存在は、あまり知られていないけれど、約400種もいるそうです。ほとんど知られていないし、あまり大切に思われていないけれど、彼らが地球の生態系、生物多様性を支えているようです。
ミツバチの種類は世界でも9種類しかないのに、単独性ハナバチは圧倒的に多様性があります。その多様性が地球生態系の生物多様性に寄与しているという。
日本ではミツバチの重要性ばかりが強調されますが、欧米先進国やオーストラリアでは、実はミツバチより単独性ハナバチの方が生態系に寄与しているという認識が広まりつつあるようです。そのことはあとの章で話題にします。

↑2019/05/11 ヤグルマギクの花で食事するナミハナアブ。
花のレストランにやって来るのはハナバチだけではありません。ハナアブたちが花蜜や花粉を食べに来ます。ハナアブという名前になっているけれど、ハエの仲間に近いそうです。
分類学的にもハエ目ハナアブ科となっています。どうりでハエみたいな顔だし、ハエみたいになめます。ただしイエバエみたいに病原菌を媒介するのではなく花粉を媒介します。見慣れると可愛く感じます。

2019/05/21 ヤグルマギクの花で食事するナミハナアブ。

2021/04/27 ムラサキハナナの花で食事するアシブトハナアブ。日本には約500種のハナアブが生息しているそうです。世界には約6000種もいるという。私がわかるのはたった20種類ぐらいでしょうか。私だけでなく、ハナアブのこと多くの人が知らないと思います。
種類が多いということが重要です。自然界はうまくできていると思います。ミツバチがすべての花を好むわけではありません。ミツバチが好まない花でも、単独性ハナバチやハナアブたちがそこで食事して、その花の花粉を運んでくれる。地球のすべての花をミツバチが担当しているわけではありません。
それに何かの異変が起きてミツバチたちが急にいなくなったとしても、代わりの者がいるのは安心です。実はそういうことが今起きているようです。あとの章で話題にします。
ともかく単独性ハナバチやハナアブたちに多様性があるから生態系の多様性が維持できるしくみになっているようです。
だからハチミツが得られるという理由でミツバチに注目が集まるのも理解できますが、地球の生態系、そして人類の存続を考えるなら、 単独性ハナバチやハナアブたちのことも配慮する必要があるわけです。

2019/05/11 ヤグルマギクの花にやって来たミナミヒメヒラタアブ。8mmか1cmほどしかない。デジタルカメラで撮ってパソコンで拡大しないかぎり、肉眼ではほとんどわかりません。

2019/05/04 カモミールの花にフタホシヒラタアブ。
マルハナバチさえ知られていないとしたら、ヒラタアブを知っている人はまれだと思います。 8mmか1cmほどしかない小さなハナアブ、私も長いあいだヒラタアブをよく見たことがなかった。小さ過ぎて、彼らのことがよくわからなかったんです。
今ではヒラタアブのようなハナアブや単独性ハナバチやマルハナバチのような、あまり脚光を浴びない、でも「花粉媒介」(ポリネーション)という重要なお仕事をしている子たちのことを知ってもらいたくて、近眼の老眼であるにもかかわらず、がんばって彼らを撮るようにしています。
でも初期のころは、例えばスイレンや薔薇の写真を撮るとき、蟻サイズのハナバチが邪魔だと思って追っ払ったりもしました。今は、そんなことはしません。花はこういう子たちに来てもらうために咲いているのだから、一緒に撮ります↓


↑2021/06/09 スイレン「ローズアレー」に吸蜜にやってきた蟻サイズの単独性ハナバチ。 10年ほど前から、昆虫たちのいない花を撮るのはつまらなくなりました。昆虫たちが食事してこそ花です。昆虫と花は切り離せない。
花に昆虫がいないとしたら、それは何かがおかしい。何か異変が起きている。 例えば農薬や除草剤が散布されたか、気候変動のせいで昆虫たちがダメージを受けたか、大気汚染か電磁波の影響か、ともかく何かがおかしい。




↑2019/05/13 薔薇にやって来たハナアブの仲間。彼らを邪魔者扱いしてはいけなかったんです。花の気持ちに寄り添う新たな美学、自然界の摂理に調和する新たなガーデニングが必要です。あとの章でそのことを主要な話題にします。

↑2021/05/30 花のレストランではこんなこともあります。ムシトリナデシコの花で、モンキチョウとトラマルハナバチが相席。

↑2021/05/22 ハナアブ(ナミハナアブ?)と一緒に吸蜜。ハナアブの方が近いので大きく見えますが、実際はヒメハラナガツチバチの方がずっと大きい。

↑2019/05/21 セイヨウミツバチとクロボシツツハムシの相席。クロボシツツハムシは、テントウムシに似ていますが、まったく違う種類の甲虫です。
私は試してみたことはないけれど、テントウムシを食べると、ものすごく苦いという。それを知っている鳥たちや他の生物はテントムシを捕食しません。クロボシツツハムシは、苦虫であるテントウムシに擬態しているそうです。

↑2021/05/06 薔薇「ドルトムント」の花粉を食べに来たベニカミキリ。花のレストランには甲虫類もやって来ます。 バッタだってやって来る↓

↑2020/10/31 薔薇の花にやって来たツチイナゴ。ツチイナゴは私たちの庭で、もっともよく見かけるバッタです。

2018/04/04 タンポポの花で食事するバッタの赤ちゃん(ヤブキリ?)。
花粉や花蜜をいただいているのでしょうが、オシベやメシベごと食べているかも知れません。もしヤブキリだったとしたら、幼いときは草食で、大人になると肉食もする雑食性。

↑2023/01/21 サザンカの花蜜を求めてやって来たメジロ。目のまわりの白いリングが特徴。ここ大分県の県鳥にもなっています。鳥たちも花のレストランを利用します。

↑ピントがぼけていますが、メジロがサザンカの花で吸蜜する様子。またうまく撮れたら差しかえます。
学校の勉強というのはいわば「試験のための勉強」です。英文法の授業は中間テストや期末テストの点数を上げることには役に立っても、外国の人と会話しなくてはならなくなったとき、全然役に立たない。
そのように教室で理科や生物を学んだといっても、あまり役に立たない。膨大な時間を学校で過ごしましたが、テストが終わったらすぐに忘れるような知識が多い。意外に何も知らないんです。私がそうです。
裏山を含めて1000坪の里山に定住を始めた2002年3月には、自然のことが何もわからない自分に愕然としました。植物のことも昆虫のこと、土のこと菌類のこと、全然わからない。

↑2018/06/01 西洋ニンジンボクの枝にいたシマヘビ。
ここに移住したころ、あらゆる生き物とどうつきあったらいいのかわからなかった。ヘビ、トカゲ、ヤモリ、ムカデ、ゲジゲジ、スズメバチ、クモ、毛虫・・・都会の生活ではあまり姿を見かけない生物が目の前にいきなり現れます。
都会なら誰かが大騒ぎして殺虫剤を噴霧するか、駆除業者に連絡するかも知れません。が、わざわざ豊かな自然を求めて里山に残っていた築明治元年(1868)の古民家に移住した私たちは、何とか先住生物たちとの共生をめざそうと模索しました。
あれから20数年、自然を観察してみてわかってきたこと・・・今回は花のレストランを利用するハナバチやハナアブ、蝶たちのこと、花とポリネーターたちの深い関係を考慮したガーデニング(ポリネーター・フレンドリー・ガーデニング)について話題にします。
私は生物学の専門家ではないし、アマチュア研究者ですらありません。だから昆虫の名前等、間違っている場合があると思います。ご指摘いただけるとうれしいです。
「研究対象」としてこの子たちのことを観察しているのではありません。もともと美術の出身で、けっきょくその夢はかないませんでしたが、画家になるつもりでした。だから学問的な見方をしているわけではありません。
単にこの子たちのことが好きなんです。美しいと思います。学問をやっているのではなく、家族に愛情を注いでいるだけです。第1章では花のレストランにやって来る庭の家族をざっと見ていただきました。
この地方は全国トップクラスの「過疎高齢化」が進んでいると言われますが、私たちには家族がたくさんいます。
どこかにお出かけして撮るのではなく、庭で撮るだけなので、毎日少しづつでも気軽に撮ります。気がつくとそんな家族写真が膨大な枚数になってしまい、有料版Dropboxに保存したままになっています。と言いつつも、晴れている日はまだ撮り続けています。
2013年春以来、庭のポリネーターたちを特に注意して毎日観察しています。玄関を一歩出たら庭ですから、自分たちが育てた多種多様な蜜源植物の様子とともに、ポリネーターたちも毎日目撃することになります。
最近、ポリネーターたちの減少化が著しいことに危機感があります。このたびこの「ポリネーター・フレンドリー・ガーデニング」について書こうと思い立ったのも、その危機感が背景にあります。
特に今春(2025年)、ミツバチを含むハナバチ、ハナアブたちが極端に少ないので驚いています。
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