ポリネーター・フレンドリー・ガーデニング
第3章
「菜の花 Rape blossoms」
↑2020/03/23 菜の花で吸蜜するミホンミツバチ。
日本がいちばん美しい季節・・・それは桜の季節だと言われます。青空と桜の花と菜の花の黄色の組みあわせは、もっとも日本的な美しい風景かも知れません。
私たちが2002年にこの地に移住したとき、桜を植えませんでした。というのも、この地方には桜の大木がたくさんあるので、それを愛でるだけで充分だと思いました。それと裏山に山桜の大木が一本ありました。
実はこの地方の場合、菜の花も畑だけでなく、道路の端、空き地等、毎年いたるところで勝手に咲くので、あえて自分たちが栽培しなくてもよさそうですが・・・

2021/01/14 ブロッコリーです。ブロッコリーがツボミのかたまりであることは、ご存知ですよね?

2021/02/03 家庭菜園でブロッコリーを栽培した人は知っていることですが、大きく育ったブロッコリーを収穫したあと、 こういう小さなかたまりが育ってきて、それをまた収穫します。そのあとはこうなります↓

2021/03/15 これをまた収穫します。家庭菜園の醍醐味です。一度収穫したら終わりではありません。家庭菜園をやらなければ、こういうものを食べることはないでしょう。売っていないから。

2021/03/15 花茎がのびて咲きだした花もあります。アブラナ科の特徴である「十字花(じゅうじか)」、四枚花弁です。
コマツナ、チンゲンサイ、ミズナ、ミブナ、ハクサイ、キャベツ、ケール、カリフラワー、ダイコン、カブ、ワサビ、クレソン等がアブラナ科で、みんな同じ十字花。「菜の花」というのはアブラナ科の十字花の総称だったんです。

2021/04/05 ミツバチと同じぐらいのサイズのニッポンヒゲナガハナバチの女の子がブロッコリーの花で吸蜜。

後ろ足にしっかり花粉をためています。

2021/04/05 ブロッコリーの花で吸蜜。それにしてもなぜミツバチの場合は「ニホンミツバチ」で、ヒゲナガハナバチの場合は「ニッポンヒゲナガハナバチ」なのでしょうか?

2021/04/05 ブロッコリーの花で吸蜜。

2021/04/06 ブロッコリーの花。

2021/04/06 ブロッコリーの花で吸蜜すると、オシベの花粉がアタマや前足に付着する仕組みになっています。十字花の花弁の下の一枚に後ろ足を置いています。 ブロッコリーはこの子たちが吸蜜しやすいよう配慮していると思います。

2021/04/07 あっというまに満開のブロッコリー。これがビー・フレンドリーまたはポリネーター・フレンドリーであることです。自分たちがブロッコリーを収穫し終わったら株を撤去し、すぐ次の作物を植える・・・というのでは、ポリネーターたちに優しくないと思います。

2021/04/09 これがニッポンヒゲナガハナバチの男の子です。ヒゲが長いのではなく、触角が長い。オスはこの長い触角のおかげですぐニッポンヒゲナガハナバチだとわかります。
メスは触角が長くないので、ケブカハナバチやケブカコシブトハナバチと間違う場合があります。

2020/10/24 ブロッコリーの葉にタマゴを産み付けに来たモンシロチョウ。ブロッコリー、カリフラワー、キャベツはヨーロッパの地中海沿岸に自生する野草、ヤセイカンラン(野生キャベツ
Wild cabbage)を品種改良したもので、どういうわけかモンシロチョウが大好物です。
成虫が好むのではなく、モンシロチョウの幼虫、青虫が食べます。青虫を退治しないと売り物にならないので、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツは農薬散布が多いと言われる。
家庭菜園でこれらを育てたかたはご存知と思いますが、青虫を放置するとあっというまに虫食いだらけになります。だからモンシロチョウがタマゴを産み付けないように寒冷紗やネットをかぶせる人も多い。
キラキラ光るテープを使う、コーヒーかすの溶液を噴霧する、ニンニクやトウガラシを漬け込んだ竹酢液を噴霧する等々、みんな色々工夫しているようです。一番オーソドックスなのは「テデトール」。手で取るだけのシンプルな方法です。

2020/10/29 ブロッコリーの様子。中央部の白い矢印のところに青虫がいます。

2020/10/29 じょうずに隠れています。

2020/11/24 ブロッコリーの様子。右下の水菜には害虫被害はありません。チマサンチュとかチシャ系、シュンギクは被害がありませんが、キャベツ系は青虫にやられます。


2020/11/24 私はこの日のブログでこう書いています。
暖かかったのと、霜がほとんど降らなかったので、青虫がまだ生き延びて、特にブロッコリーの葉をがんがん食べてくれます。カマキリやアシナガバチが死んでいくので、天敵にやられずに生き延びている。唯一の天敵は私かな・・・。普通の年なら姿を見かけないはずなんですが。

2020/12/01 そう言いながら我慢していると、こんなふうにブロッコリーの葉にも霜が降りて青虫もいなくなりました。

2020/12/01 ポリネーター・フレンドリーということは、まずは農薬や除草剤に頼らないということではないでしょうか。商品として販売するのであればやむを得ないと思います。
ガーデニングと農業は違います。農業の場合はひとつの産業ですから、青虫に食われて葉がボロボロになりました。出荷できません、というわけにはいきません。ガーデンの場合は、ブロッコリーを育てたいのではあるけれど、ガーデンの環境全体を育てたい。
ブロッコリーだけではなく、土壌、微生物、多様な昆虫、多様な植物を育てたい。カエルや野鳥も住んでほしい。全体が育ってくると、1種類の生物(例えば青虫)だけが大発生するということが起きにくい。
農薬や除草剤を使用する環境では、地中に巣を作るニッポンヒゲナガハナバチは生きていけません。農薬や除草剤は生態系のバランスを壊すので、1種類の生物だけが大発生するような環境を作り出してしまう。
ただし観光ガーデン(フラワーパークや薔薇園)は、花が昆虫に食害されたり、茎葉にアブラムシがいっぱい付着していたり、毛虫がうじゃうじゃいたりするところをお客さんに見せるわけにはいきません。農薬に頼る必要があると思います。

2025/04/11 菜の花で食事しようとしている ニッポンヒゲナガハナバチのオス。

2025/04/11 菜の花で食事するニッポンヒゲナガハナバチのオス。
農薬や除草剤に頼らずにブロッコリーなどを育て、自分たちがそれをありがたくいただいたあとには、花が咲き終わるまでは刈り取らず、 彼らが菜の花レストランを利用できるようにする・・・それがポリネーター・フレンドリー・ガーデニングです。

2021/04/20 水菜の菜の花で吸蜜する蟻サイズのハナバチ。

2021/04/20 吸蜜をやめて触角を整えているように見えます。そういうところが単独性ハナバチらしい。ミツバチはてきぱき吸蜜し、さっさと次の花に飛び去っていきます。ゆっくりと触角を整えているひまなんてないと思います。

2025/04/08 これも水菜。赤茶系の蟻サイズのハナバチ。たぶんダイミョウキマダラハナバチ。下はその拡大↓

2025/04/08

2025/04/08 上の子が吸蜜する様子。

2025/04/11 交雑系菜の花で吸蜜する蟻サイズのハナバチ。下はその拡大↓

2025/04/11

2025/04/11 上の子です。
アブラナ科の野菜は、何か対策しないとみんな交雑します。交雑して原種系にもどる、というか先祖がえりするというか、たくましくなって、何の世話もしないのに勝手に育ち、勝手に花を咲かせます。
もうずいぶん長い間、私たちは雑草化する交雑系菜の花のお世話になっています。毎年菜の花のシーズン、これをいただきます。開花しきったものではなく、つぼみのうちに摘んで毎日のようにいただきます。

2016/03/15 菜の花で吸蜜するニホンミツバチ。
これが菜の花の開ききっていないものです。これをいただきます。「F1食用菜花」の種をまくと、もっとつぼみが多い、見ばえのいい菜の花が収穫できます。私も2度ほど栽培しました。スーパーマーケットで売られている菜の花はそれだと思います。
売られているほとんどの野菜は化学肥料と農薬を使用する栽培だと言われています。虫食いあとのある野菜は誰も買いません。レストランで使っている野菜のほとんどは化学肥料と農薬を使用する栽培だと言われています。
安く販売するためには単一作物を大量に栽培するしかありません。それは経済的には効率がいいけれど、生態系的には極めて不自然なことであり、 不自然なことをすると病害虫をまねくというのは自然界の摂理です。とはいえ今のところ仕方がないと思います。

2020/02/19 菜の花で吸蜜するニホンミツバチ。

2020/02/19 菜の花で吸蜜するニホンミツバチ。

2020/02/19 菜の花で吸蜜するニホンミツバチ。厳寒期だと思うんですが、この年ニホンミツバチが早い時期から菜の花にやって来て吸蜜していました。2020年2月19日のブログで私はこう書きました
白菜、キャベツ、小松菜、ブロッコリー、水菜、カブ・・・・ みんなアブラナ科植物で、こんなふうな十字花を咲かせ 私たちはツボミのときに毎日のようにいただきます。家庭菜園の贅沢です。
実はこのアブラナ科の十字花は ミツバチの大好物でもあります。 今日、上の写真を撮りました。 エンジェルファームに来たら 一年中、ミツバチの食べ物があります。まさにミツバチの楽園。

2020/03/23 菜の花にやって来たミホンミツバチ。顔に花粉が付着して、ちゃんと目が見えるのでしょうか?

2020/03/23 菜の花で吸蜜するニホンミツバチ。

2021/ 03/19 菜の花はハナアブたちにも人気があります。この子はごくごく小さいハナアブ。ヒラタアブの仲間だと思います。

2024/03/04 この子も小さい(1cmかそれ以下)。ヒラタアブの仲間。

2021/04/06 菜の花で食事するシマハナアブ。

2025/04/11 シマハナアブの体毛に花粉が付着しているのがわかります。

2021/04/07 ドウガネホシメハナアブ・・・だとしたら、めったに見ないハナアブです。

2021/04/07 アシブトハナアブ。2013年春、私がミツバチと間違えたのがアシブトハナアブ。あれから多種多様のハナアブやハナバチに出会いました。

2019/04/01 ベニシジミ。拡大していますが、ごくごく小さい蝶。幼虫の食草がスイバやギシギシなので、庭で栽培しています。人間には人気のない雑草ですが、昆虫たちには人気があります。

2018/03/27 菜の花で吸蜜するコツバメ。シジミチョウの仲間だからごくごく小さい。小さくて地味だからこの蝶の存在に気づく人は少ない。というか、絶滅しつつあるので個体数が少ないのでしょうか?
東京都・・・絶滅
千葉県・・・絶滅寸前または絶滅危惧1類
福岡県、鹿児島県・・・危急種
宮城県、埼玉県、長崎県、宮崎県・・・準絶滅危惧
庭にアブラナ科の野菜を栽培すると、まず私たち自身が恩恵を受けます。思いのほか長く収穫できます。花が咲くと、ハナバチやハナアブたち、バッタたちも恩恵を受けます。
菜の花は花の少ない早春から長いあいだ開花します。私は常々、菜の花は極めて貴重な蜜源植物であると思っています。
こぼれ種で、交雑種が毎年勝手生えします。雑草化するわけです。この地方で毎年道端や川岸で咲く菜の花は交雑し原種化した強いアブラナ科植物です。私たちはこれを「オバケ菜」と呼んでいます。
これを菜園から排除せずに生かすと、手間のいらない蜜源植物となってくれ、私たちもこのツボミを収穫して長期間いただくことができます。
ポリネーター・フレンドリー・ガーデニングを始めるにあたって、アブラナ科の野菜苗を育てる、または種から育てると、まずは収穫の歓びがあります。青虫に食われたら食われたで、モンシロチョウを飼育したと思えばいいじゃないですか(笑)
10年ほど前だったか、「モンシロチョウを増やしたいからキャベツを栽培して」と妻が言ったことがあります。そういう考え方もあります。ただしガーデンの生態系が整ってくると、モンシロチョウが大量発生しにくくなります。
ナミアゲハの幼虫は柑橘類の果樹(ハッサク、ミカン、カボス、ユズ)の葉が大好物なんですが、サナギになるまで生き延びるのは難しい。サナギになっても蝶になれない子も多い。
アシナガバチやスズメバチ、肉食系のバッタ、カマキリ、肉食系のアブ、野鳥等の天敵に見つかったらおしまいです。一人前の蝶になるというのは、けっしてたやすいことではないなーと妻と話し合ったことがあります。
自然界はそういう微妙な生態系のバランスが働いていて、1種類の生物が大量発生しにくくなっています。そのバランスを壊してしまうのが農薬であったり除草剤です。
農業には必要だとして、ガーデニングには不向きだと思います。今、話題にしています花粉の運び屋さん(ポリネーター)たちも暮らしていけなくなります。
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