ポリネーター・フレンドリー・ガーデニング
第4章
「ムシトリナデシコ Catchfly」

↑2020/05/28 ムシトリナデシコの花で吸蜜するナミアゲハ。

「虫取り撫子」なんていう名前だから、食虫植物かなと思う人があるかも知れませんが、まったく違います。なぜ誤解されるような名前をつけるのでしょう。

名前を変えてほしい・・・と思っていたら、英語名が「キャッチフライ Catchfly」=ハエトリだった。和訳するとき、さすがにハエトリとはせずムシトリにしておいたのでしょう。

アリに花蜜を盗られないために、茎の一部に粘着性のある分泌物を出しているのだという。確かに少しネバネバしているけれど、ゴキブリホイホイみたいな威力はありません。アリやハエがこのネバネバで身動きできなくなっている姿を見たことはありません。

アリが取れるほどの粘着力ではありません。嫌がらせをする程度でしょうか。とはいえ確かにムシトリナデシコの花でアリを見たことがありません。ということはネバネバの嫌がらせは効いているということでしょうか?

「盗蜜(とうみつ)Nectar robbing」という専門用語があります。送粉生態学・動物行動学用語だそうです。花蜜を盗るだけで、花粉を運んでくれない、受粉の仕事をしてくれない者のことです。

ムシトリナデシコのネバネバはアリの盗蜜、つまり蜜ドロボーを防ぐためのものだといいます。

2019/06/05 ムシトリナデシコで吸蜜するキアゲハ。

2021/05/23 モンキアゲハ。

2014/05/17 ナガサキアゲハ。

2019/06/05 アカタテハ。

2017/05/26 アオスジアゲハ。

ムシトリナデシコの花は蝶たちに大人気です。蝶たちに庭に来てもらい人はムシトリナデシコを育てるべきです。ただし、環境省&農林水産省が2015年に定めた「生態系被害防止外来種リスト」の掲載種となっています。

私は出身地の関西に住んでいた時代には、ムシトリナデシコを知りませんでした。大分県の内陸部に移住して、道端に生えている花が可愛いと思って庭に持ち込んだら、多様な蝶が次々とやって来るので驚きました。ムシトリナデシコと蝶の組み合わせの写真をずいぶん撮りました。

ヨーロッパ原産で、江戸時代末期に観賞用として日本に持ち込まれたという。それが雑草化し帰化植物となっているわけです。明治維新が1868年、帰化して160年以上の歴史がありますが、このピンク色が国土に蔓延しているようには見えません。

私が庭に持ってきて20年以上たちます。毎年こぼれ種で勝手生えです。が、それほど広がりません。20年以上、ムシトリナデシコを観察しています。蝶を呼びたいのでもっと広がってほしいけれど、年によって増えたり減ったりです。

今年(2025年)は、ずいぶん少なくなっています。他の植物を圧迫するような育ち方ではないと思います。それなら園芸店で売っているオルレアの方が危ないと思います。

オルレアは非常に多くの種をつけます。しかも非常に大きな種です。オルレアの種は発芽力があり、生育力があります。他の在来植物を圧迫するほどの勢いです。これを河原や草原に持ち込んだら、何年か経つとオルレアの白い花が覆いつくすようになっていくと想像します。

Amazonでも楽天ラクマでも、300円台でムシトリナデシコの種が販売されています。蝶はムシトリナデシコの花が大好きです。それゆえに私もムシトリナデシコを大切にします。栽培するなら庭から出さないように注意したらいいと思います。

私たちの庭は裏山や駐車場を含めて約1000坪ありますが、ムシトリナデシコがどんどん広がっていくようなことはありません。オルレアは、砂利の上に表土が1cmというような厳しい環境である駐車場の端に毎年広がっています。

2023/05/21 ガウラが多く、そのなかにムシトリナデシコが混ざり、オルレアは少ない。

2024/05/20 ガウラが多い。ムシトリナデシコも健在。

2025/05/20 ガウラが減り、オルレアが優勢。ムシトリナデシコはほとんどない。ちなみに左上の屋根はお隣の農業倉庫と作業場。2013年当時、ほとんど野菜畑菜だったエリアが今は果樹と薔薇、花木、草花、野菜の庭になっています。

2025/05/20 駐車場の端をオルレアが占領している様子。ムシトリナデシコは、ひょろひょろ伸びる感じで他の植物と共生できますが、 オルレアはボリュームがあり、他の植物を圧迫していくように見えます。

過去最大に勢力を伸ばした姿です。にもかかわらず、今年(2025年)、これほどオルレアが増えたのに、ハナアブたちの訪花は過去最低です(5月27日現在でも)。

そのことは後の章で話題にしますが、オルレアは多様なハナアブたちが好むので、庭で栽培し続けたい植物ですが、 庭から出さないように注意すべきであると思います。

2022/05/18 前庭で栽培しているムシトリナデシコの様子。同じ蜜源植物はある程度まとめてボリュームをもたせてやった方が、ポリネーターたちに親切だというのでそうしています。そのことはあとの章で話題にします。

2023/05/22 前庭のムシトリナデシコ。

2024/05/25 前庭のムシトリナデシコ。

2022/05/19 ムシトリナデシコに吸蜜にやってきたキタテハ。 

2019/05/30 長いストローを持て余しているかのようなクロセセリ。 

2019/05/30 クロセセリが吸蜜している様子といってもいいのでしょうしょうか?  

話は変わって、蝶についてひとつ疑問があります。蝶は美しい。長いストローを伸ばして花蜜を吸う姿はサマになっている。ハチやアブやバッタと違って万人から愛される。ところが彼らは本当に「花粉の運び屋さん」なのでしょうか?

花のなかにアタマをつっこんで花粉まみれになるハナバチたちとは様子が違います。オシベやメシベに触れることなく長いストローで花蜜を吸っているように見えます。植物の受粉に貢献せず、蜜だけいただく行為を専門用語で「盗蜜」という。

わかりやすく言うと「食い逃げ」「ただ食い」。蝶たちって、ひょっとして昆虫界の「蜜ドロボー」なのでしょうか? 

Wikipedia日本語版は「昆虫の場合、チョウ目・アリ・アザミウマが良く観察される盗蜜者である」と記述しています。

2019/05/24 この生き物、見たことがありますか? 私はこの地方に移住して初めて見ました。不思議な生き物だと思いました。こんなふうにホバリングしながら吸蜜するのが得意。これだとカラダに花粉が付着しそうにありません。

2019/05/24 吸蜜するときに伸ばすストロー状の口は蝶みたいだけれど、羽が透明です。ストローと触角と手足がなければ、トビウオみたいです。ハチドリのようにも見える。

2019/05/24 この子のストローの上部に青紫系の付着物があるのは花粉かも知れません。首の下、お腹に続くひだも紫色が付いているのが見えます。これが花粉だとしたら「盗蜜疑惑」が晴れます。

君はいったい何者なんだ・・・ 実はスズメガの仲間、オオスカシバでした。眼は複眼ですが、ヒトミみたいに見せるメカニズムがあるそうです。

2018/05/25 この子もスズメガの仲間、ヒメクロホウジャク。 漢字で書くと姫黒蜂雀。ハチスズメ? 触角が無ければ鳥のようでもあります。でも口は蝶です。蝶? 蜂? 鳥? 蛾の仲間だったんです。



ヒメクロホウジャクの羽は透明ではなく茶色。花に着地せず、ホバリングしながらストローで吸蜜するこの方法、これでは「盗蜜疑惑」をかけられても仕方がないかと思います。

2024/05/25 ムシトリナデシコで吸蜜するメスグロヒョウモン♀。それでは蝶たちの「盗蜜疑惑」の話題です。この姿だけ見たら、盗蜜の疑いありかも知れません。

メスグロヒョウモンの吸蜜

口元を拡大すると、紫色になっています。それは画面右下に見えるムシトリナデシコのオシベの色と同じです。

デジタルカメラで撮影した元画像は昆虫の場合、だいたい5メガバイトから7メガバイトあって、パソコン上で拡大する映像は鮮明です。Webサイトにのせる時には、80キロバイトから100キロバイトぐらいまで軽くするので、残念ながらちょっと不鮮明になります。

2024/05/25 メスグロヒョウモンは他の蝶と同様、長いストロー状の口を持っているんですが、まるでハナバチみたいに顔を突っ込むときがあります。短い口で吸蜜するハナバチたちと違って非常に長い口を持つのだからこんなことをしなくてもいいはずです。

写真左下の黄緑色に見えるのはムシトリナデシコの未熟な実です。ひょっとしたら実を育てるプロセスに入ったムシトリナデシコの花蜜が少なくなって、顔を突っ込みたくなるのでしょうか? あるいは何かムシトリナデシコが仕掛けをしているのかも知れません。

盗蜜を嫌って、アリ避けのためにネバネバを分泌するぐらいだから、ムシトリナデシコは何らかの策を持っているのかも知れません。

ここまで顔を突っ込むと、当然オシベ・メシベと接触します。

だから口元とその上の部分が紫色になっています。そのアップが下↓

メスグロヒョウモンの吸蜜

青紫の上に白いのも付着しているのは、それもどこかでもらった花粉でしょうか? 

2020/05/27 探してみたらこんな写真が見つかりました。メスグロヒョウモンだと思います。そのアップが下です↓ 

メスグロヒョウモンの吸蜜

口まわりがすっかり紫色のものが付着しています。ムシトリナデシコの花粉でしょうね。この顔見たら、「盗蜜疑惑」が濡れ衣であったことがわかります。

草花の多くの花粉は20~30ミクロン程度、1ミクロンは0.001mm。 非常に小さいので、口のまわりの花粉、これだけでも立派な量だと思います。それでは他の蝶はどうでしょうか?

2020/05/29 ムシトリナデシコで吸蜜するヒメアカタテハ。下はそのアップ↓

ヒメアカタテハの吸蜜

口まわりが紫色に染まっています。

2020/05/29 花芯に顔を突っ込むヒメアカタテハ。このときオシベとメシベに接触しているはずです。下はそのアップ↓

ヒメアカタテハの吸蜜

口まわりが紫色に染まっています。写真を撮るとき、長いストローで吸っている姿の方が見ばえがいい。顔を突っ込んでいる姿をほとんど撮らなかったので気がつかなかったのかも知れません。

口まわりが紫系に染まっています。

モンキチョウの吸蜜

口まわりが紫系に染まっています。

口まわりが紫系に染まっています。

口まわりが紫色に染まっています。

2020/10/24 モンシロチョウによく似たスジグロチョウ。

けっこう顔をくっつけることがあります。長いストローを持っているので、その必要がないと思うんですが。下はアップ↓

わかりにくいかも知れませんが、口元の毛に紫色がついています。毛が密生している顔を、こんなふうに花芯に接近したら当然花粉が付着すると思います。

2022/05/25 アオスジアゲハ。ストローで吸蜜している姿が見ばえがいいと書きましたが、以前の写真を探してみたら、花芯に接触する姿もけっこうありました。

2022/05/25 口元に紫色がのぞいています。

2024/05/25 充分に長いストローを持っているのに、なぜこんなに花芯に接近して吸蜜するのか。何か理由があるんでしょうね。下は拡大↓

2024/05/25 ナミアゲハやキアゲハ、モンキアゲハのような大型の蝶については、まだこういう写真を見つけられていません。見つかったらアップします。あるいは新たに撮ってみます。

2018/05/24 ムシトリナデシコで吸蜜するニッポンヒゲナガハナバチのメス。ムシトリナデシコはハナバチたちにも人気があります。

2018/05/24 この庭では春はミツバチよりニッポンヒゲナガハナバチが活躍しているような気がします。春が終わると姿を消します。あとは土中生活するそうなんですが、その生活ぶりは見たことがありません。

2019/06/01 ニッポンヒゲナガハナバチが吸蜜を終えて、花芯から頭を離しているところ。

2019/05/24 コマルハナバチの吸蜜。以前は大勢で来ていたんですが、最近極端に少ないと思います。

2021/5/22 クロマルハナバチだと思います。コマルハナバチと似ているので間違うときがあります。

2021/5/22 オシベが顔にくっつく様子、花びらにじょうずにつかまる様子を見ると、この花は本来、こういう子たちに来てほしいのでしょう。けれどこの子たちの短い口では、筒状の花の基部まで届かないと思います。いったいどういうことなんでしょうか?

2018/06/02 クロマルハナバチ。

2020/06/03  トラマルハナバチ。この庭でもっとも元気なハナバチですが、今春(2025年)ほとんど姿を見せません。

2019/05/30 トラマルハナバチ。

2019/06/01 トラマルハナバチの吸蜜をアップ。口元に紫系の花粉が付着しています。

2019/06/01 吸蜜をやめて口を上げているところ。黒い顔に花粉が付着していのがわかります。

2021/05/22 重量級のキンケハラナガツチバチ。「腹長」で重量級のせいで、もたもたしている。キビキビしたミツバチの動きと対照的です。「キンケ」とは何かと思えば「金毛」。背中の黄土色を金色とみなした。

2021/05/22 外の花を踏み台にして吸蜜。

2019/06/01 ムシトリナデシコで食事するオオハナアブ。蝶やハナバチほどではないにしてもハナアブたちの来客もあります。

2019/06/01 拡大しているので大きく見えますが。オオハナアブはけっして大きくない。ナミハナアブなどの普通種とサイズが変わりません。

2019/06/01 目に不思議な模様が現れます。「斑紋(はんもん)」というそうです。 

2019/06/05 名前不明。けんめいに食事するポーズが面白い。

2019/06/05 上の子。 

2021/05/23 アシブトハナアブ。 

2021/05/23 アシブトハナアブ。

2025/05/25 体長1cm前後の、ごくごく小さなミナミヒラタアブ。もし、ヒラタアブのことを知らなかったら、花を見るとき注意してみてください。 小さい子がホバリングしているかも知れません。

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