カワイイ恐竜2024
Kawii dinosaur
2024/08/23
上の写真は拡大していますが、本当はごくごく小さい。体調4~5cmていどです。このプラスチックケースに隠れているところをヴィラモが見つけました。屋内に棲息していたんです。何を食べているんだろうとヴィラモは心配しました。
ヴィラモはカワイイ、カワイイと言って、傷つけないよう踏まないよう大切にあつかいますが、こういう爬虫類を見慣れていないひとはギョッとするかも知れません。殺虫剤を噴霧しなくてはと焦るかも知れません。
ギョッとしないでください。子供と書いたけれど、まあ「赤ちゃん」だと思います。赤ちゃんなのに、ひとりでけん命に生きている。親も誰も世話してくれないのに、けなげに生きている。こんな小さなカワイイ赤ちゃんのことを、どうか恐れないでください。
と書いたけれど、一方で東南アジア、アフリカ、アメリカ大陸に生息する色鮮やかなイモリが、ペットショップで数万円で販売されている。イモリのことを英語で「ゲッコー」というらしい。「ゲッコー」という名前で売られている。
イモリのような小さな爬虫類をかわいがってくれるのは「ケッコー」なことだけれど、野生生物が生きていた本来の環境から引き離し、人工的な小さなケースで飼育すること、彼らにとってみたら「ケッコー」なことではないはず。
こういうペットが逃げて繁殖した場合、ニホンヤモリのような在来の野生生物が駆逐され生態系に悪影響を及ぼす可能性がないとはいえません。 ブラックバスやアライグマやマングースやガビチョウみたいに。で、結局「侵略的外来種」とか言われて憎まれ殺される、それは「ケッコー」なことではない。悪いのは人間なのに。
ニホンヤモリは日本の風土にあったヤモリなので、生態系をちゃんと配慮してやれば都市でも野外で棲息できるはずです。ただし東京、千葉、群馬で準絶滅危惧種に指定されています。静岡、兵庫で要注目種になっています。
同じハ虫類でも、ヘビやトカゲと比べると愛嬌があります。「カワイイ恐竜さん」という風情です。 巨大化したハ虫類=恐竜たちはことごとく絶滅したけれど、「カワイイ恐竜さん」たちは日本人の住環境に適応し、長いあいだ日本人と共に生きてきた。
東北大学大学院生命科学研究科&東北大学東北アジア研究センターによる最新の研究があります。
『ニホンヤモリは外来種だった! 遺伝子と古文書で解明したヤモリと人の 3 千年史』(2022)
ニホンヤモリは約 3000 年前に中国から五島列島、さらに九州へ渡来したと推定できました。約 2000 年前の弥生時代になると、九州から複数のルートで西進が始まり、遅くとも平安
時代末までには近畿に定着していました。
その後、一部が東海道を東に進み、江戸時代 後期~明治初期に関東へ達しました。これは 17 世紀にはまだ「関東にはいなかった」 という1697
年の本朝食鑑の記述と整合します。
また、戦国時代には近畿から北陸へと移住し、江戸時代には北陸から北前船の寄港地として栄えていた酒田に移りました。
推定された移動ルートや移動時期を含め、ニホンヤモリの分布拡大の歴史は、平城 京・平安京の建設など古代の近畿地方の発展や、中世・近世の貨幣経済化、廻船問屋などによる物流網の拡大といった日本社会の発展と多くの符号点を示します。
これはニホンヤモリが人間活動の拡大とともに、人の移動や物流に便乗して分散し、現在の分布を形成したことを示唆します。
「ニホンヤモリ」という名前で、学名も“Gekko japonicus”となっているので、てっきり日本固有種だと思っていたんですが、外来種だったという。それにしても移住して来たのが、はるか昔の3000年前であっても「外来種」と言うんですね。知らなった。
しかし「外来種」だというんなら「ニホンヤモリ」の「ニホン」は取るべきなのではないでしょうか? 詩や美術ではなく科学・学術の分野というんでしょ。「ニホンヤモリ」と命名されていたら、誰でも日本の「在来種」だと思うじゃないですか。
まあともかく3000年前に日本列島に住みついた生物ですら「外来種」というのあれば、「在来種」だと思っていた多くの生物がきっと「外来種」なんでしょうね。
そして生粋の日本人だと思っている多くの日本人が、実は「外来種」と 判定されるに違いない。私は間違いなく「外来種」だと思います。外来種と在来種の交雑種でしょうか。
ニホンヤモリはプラスチックケースに潜んでいたりするぐらいだから、人間の荷物に潜んで一緒に移動した。人間の移動とともに日本各地に広がっていったわけですね。けれど、最近になって日本の首都東京方面で絶滅を危惧される状況になってきた。
ヤモリは現在の東京では暮らせなくなった。東京だけではありません。ヤモリだけではありません。国連報告書(2019)によると、今後数十年で、世界のおよそ100万種の生物が絶滅する恐れがあるという。それは私たち人間も暮らしていけない地球になってしまうことを意味します。
このままずるずると破滅への道を歩んでいくのか、それとも多様な生命と共生する道を選択できるのか、私たちは今、非常に重要な時を迎えているようです。